アニメーションにて鉄はなぜ永久磁石にならないのか、着磁の原理、最強磁石のネオジム磁石はなぜ強力なのか詳細をご説明いたします。
マグネットの着磁方法
着磁コイルによる着磁
アニメーションでご覧になっていただいた通り、磁石を着磁する場合、コンデンサーに充電した電荷を瞬間的に放電するコンデンサー式着磁電源装置(パルス式電源)を 使用し、着磁コイル、ヨークに大電流を通電します。
着磁コイルに発生する磁界は一方向のみですので、N,S極一対の着磁のみに対応します。一例として上図の様な着磁仕様のマグネットに対応します。
着磁コイル内部に挿入可能な大きさであれば磁石の形状に関係なく着磁を行う事が可能です。ただし、異方性磁石を着磁する場合、印加する磁界の方向と、配向方向が一致している必要があります。
空気中に発生する磁界は理論上、飽和する事がありませんので、印加する電流とコイルに発生する磁界は比例関係にあります。条件を満たすことが出来れば、アルニコ、フェライト、希土類(焼結、ボンド)ネオジム、サマリュムコバルト磁石等あらゆる磁石材料に対応いたします。
着磁ヨークによる着磁
画像にマウスポイントを重ねると、マグネットをセットした状態になります。
外周面4極着磁ヨークイメージ
内周面4極着磁ヨークイメージ
平面6極着磁ヨークイメージ
着磁ヨークは複数のコイルとコア部(鉄芯部)とで磁気回路を形成し、様々な着磁パターンを可能にします。アニメーションでご覧になって頂いた通り、鉄芯には透磁率の高い材質(純鉄等、炭素その他の含有率が少ない材質)を使用する必要があります。又、渦電流による損失を軽減する為、積層鋼板をコア部に使用する場合もあります。
磁気回路を形成するコア部(鉄芯部)は対象となるマグネットの着磁面(内周、外周)に最適な形状である必要がありますので、磁石形状、着磁極数が異なるマグネットに対応する事は出来ません。
又、磁石形状、磁化パターンによっては着磁ヨーク単体では無く、外周、内周面ヨークの組み合わせ、平面ヨークを2ヶ使用しマグネットの上、下面より 同時に着磁を行う方法もあります。
鉄芯による磁気回路を持たない着磁コイルと異なり、磁気回路に使用するコア材が磁気飽和する領域以上まで高磁界を必要とする場合がありますので、一部のサマリュムコバルト磁石には対応出来ない場合があります。
コンデンサー式着磁電源装置の詳細
マグネットを着磁するには強力な磁界を印加する必要があります。
マグネットを飽和着磁させるのに十分な磁界を発生させる為には着磁コイル、ヨークに数千A~2~3万A程度の電流を通電するする場合があります。前記の電流をを定常的に通電するのは非常に 困難な為、コンデンサーに充電した電荷を瞬間的に放電するコンデンサー式着磁電源装置(パルス式電源)を用いるのが一般的です。
その他の着磁方法
電磁石を用いた着磁(磁化)方法
コンデンサー式着磁電源装置がパルス磁場を発生させて着磁を行うのに対して、直流電源と電磁石を組み合わせて直流磁場(静磁場)で着磁を行います。
電磁石のコイルに電流を通電している時間がパルス式よりも長いのでコイルの発熱、電源の消費電力は大きくなります。
主に薄型のマグネット(シート状マグネット等)の表裏にN,S一対の着磁を行うのに適しています。
強力なマグネットを用いた着磁(磁化)方法
強力な磁石(希土類磁石)で磁気回路を構成し、その間に磁化対象となる物を通過させます。
磁界を発生させる為の電源、冷却装置が不要なのが特徴です。無電源着磁装置という名称で呼ばれています。
着磁に必要な磁界をマグネットで発生させますので、同仕様のマグネットの着磁を行うことは出来ません。比較的磁化の容易な素材、薄型の形状の物に用途は限られます。